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戌考1 象徴の必要。


人類の協働の基礎に神々、国家、お金といった虚構をつくった。虚像と虚飾で彩られ虚構を常に演出してきた。そんな人類に「象徴」とは、どのような役割をもってきたか。


その鋭い輝きでシンボル(象徴)として見立てた造形がある。「王」というかがやく象徴的神具だ。


「王」造形は、その「戌(いぬ)=鉞(まさかり)」造形の刃(やいば)部分だけを取り出して、刃の向きを下に90度回転させ刃部を下にして置き、下方にあまねく広がる統治の威光を表現している。


「王」造形の青銅器(商王朝後期多数)も多数出土する。現代の政治的な視点だけでみれば、権力‹軍事力›等の象徴や統治者の威厳としての役割として見ることができる。



しかし古代の発想の重要なポイントはそれだけであろうか。神具は実用性的な武器ではない。尊厳を保ち威儀を正す役割を表象した、このような儀器(戌)の見立ては、実用の合理的思案だけでは成り立たないシンボルの発想や、その見立てのイメージの豊かさを物語る。



甲骨文では 王の名を冠する中には、祭祀対象としての神も刻まれている、

「王ソク」=神名。「大」頭部を傾く造形は「夭」「笑」に通じるかたち。

「王亥」=神名(鳥神、風神)※亥年参照★

「王恒」…王亥の兄弟説もあるが、合祀は確認できていない。※寅年参照★

「小王」…第三期の王「中王(村南派)」1400王墓から康丁の父祖とされる。


王のつく連語の文として

「王族」…王の軍隊。

「王使」…戴王使として王の命を戴くこと。

「左王」…合14888 

 示(神)は王に左(たた)るか。等が見える。


王は祟りを畏れた。

「王、占いみて曰く、

たたり有らんか」と、

重ね重ね、「安寧」祈願を齊行する。



 わが列島では三種の神器の草薙剣(くさなぎのつるぎ)や、荒神谷の銅剣等がある。銅剣は実用の武器として弥生時代のはじめ頃に活用され、列島独自で作られるようになってからは製作の最大の目的のひとつに、祭器として五穀豊穣の祈りを祈願を願うものがあった。近年では古墳から日本で一番長い剣が発掘された。これらも実用的な人や生き物を殺傷する実用的なものではない。神具である。

 更に遡れば、縄文土器の装飾のように、機能性を越えて祭るべき対象となり、その邑の人々のための祭祀者・統治者の象徴としての拠り所となるもは、古来からわれわれ人類には不可欠であった。その「象徴」が人々の暮らしや安寧に寄与した効果は絶大である。

 我が国の象徴天皇制は、日本国憲法第1条で規定された天皇を、日本国及び日本国民統合の象徴とする制度である。天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づくとする。

 神聖の象徴を、生きた人間としてしまった戦中の「国家神道」の愚かさは歴史がよく知っている。天皇は神でない。同様に神職も神ではない。媒介としての単なる「ひと」である。また、佛になろうとする聖職者もいるが、本来「なにものかになる」ために生きているわけではないだろう。人は死ねばみな「佛」となる。現世ではそれぞれが役割として演じているだけだ。神職になる前はまったく気がつかなかったが「王」なる象徴の役割は、互いの差異を認め、議論し、融即するために必要なのかもしれない。代表が誰もいなくなってしまつったら完全な平和がすぐに訪れるだろうか? 突然プーチンや習近平が消えたら軍部は暴発しかねない。

 西洋諸国の価値観に翻弄され、データやグラフを権力者の都合で書き換える。近代科学の方便と、そのおごり高ぶった姿勢は、かけがえのないものは忘れ去られ、足元の大切にあったものを失いつつある。文字創成時、象徴の発想を造形として刻んだ祖先は、どうおもうだろう。


甲骨文字の世界にも段階がある。

最期の5期は政治的権威的な文字記号への堕落がはじまっている。

かけがえのない純粋な発想の原点ならば

ほんとうのはじまりの造形を見極めなくてはならないだろう。




最期に「十干十二支(じっかんじゅうにし)」の「暦」として注意すべき点がある。

十干の「つちのえ=漢字は「戊」」

十二支の「いぬ=漢字は「戌」」



似て非なる物で、この考察はより重要なテーマである。

「戌」は神聖な儀器。

シンボルとしての神具である。

武器「戈」とは異なる。


差別と区別は異なるし

批判と議論は異なる。

似て非なる物はややこしい。


複雑な世界にシンプルでたしかなことを。


原姿を発想せよ。






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