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戌考3 『歳』という祝祭。Jupiter line 

太陽系の中でも、大きさ、質量ともに最大の惑星でもある木星(Jupiter)は、大陸では黄道に沿った公転周期がほぼ12年であることから、十二次を司るもっとも尊い星として木星は「歳星」と呼ばれる。また、のちの道教においては天形星(天刑星、てんけいせい)の名で神格化され、牛頭天王さえ喰らう凶神としておそれられた。


※甲骨文字は「歳星」という語はない。

年という時間を表す「時の發想」造形。



『歳』と『Jupiter』:SuiBunArt 好循環SAPIENS Art Collection


天文学のシンボルとしての惑星記号も諸説ある。

 神の稲妻を様式化した記号とも言われ、またギリシア語ゼウスの頭文字からローマ人がつけた接頭語"zeno-"は、しばしば木星にかかわる諸物を表す単語に用いられる。たとえば木星表面の研は"zenographic"と表現される。

 また木星の惑星記号は射手座の守護星であるとし、発展と拡大、成功を司るとされ。 惑星記号に、魂を象徴する三日月と物質を象徴する十字の組み合わせとする。 三日月を十字の上に描くことで、物質から解放された魂をあらわしているともいわれている。



 一日は朝拝(ちょうはい)にはじまり、夕拝(ゆうはい)に至るまで日々のおつとめを執り行う。

新しい歳は元旦の歳旦祭、三日の元始歳、年間を通して歳時記の節目には、さまざまな年中行事がある。

十二月晦日の大祓でその歳納めをする。


「歳」は甲骨文では、一年をあらわす重要文字である。

 原初「歳」の初形は戉(えつ)造形や戌(いぬ)造形を基本とした。戌造形の刃にあたるラインは湾曲し丸みをおびて表象され幅広い刃を描いたのであろう。「歳」造形の異体字には、戉造形の刃先を湾曲せずに直角折り、その間の上下に小点を加えた造形がある。さて、この小点は、何を意味するのか。


 

<小点造形考察>

甲骨文字造形の小点は、それぞれ文字ごとで意味が異なる。たとえば、血液に見立てた小点、目に見えない音速を現わした小点、御神酒の酒滴としての小点、輝きなどの光線をあらわす小点など、意味の読み取り方も文脈によっても多種多様で、その発想をとらえなければ真実は見えてこない。簡潔な情報(小点)の中には多くの意味が込められている。「歳」の場合は、刃の持つ威光としての輝きの表現と見えるが、犠牲の血か、御饌神酒(みけみき)のお清めにふりかけられた酒とも、両方の可能性をとることができる。また異体字にある肉造形も、神饌の表現か、月日の意としての月の表現としてもとることができる。


最終的に現代漢字に継承されたのは、刃に「歩(あしあと・進行の意)」造形がつく造形で、その鉞(まさかり)の刃部に、【歩】を大小に分けてしるした、進行する意をあわせ現代漢字「歳」造形へと変遷した。




現代漢字「年(ネン・とし)」は、一年とする単位として通用しているが、甲骨文においては「歳」造形が一年をあらわした。年の表示の意として「今歳」「來歳」で時がすすむことを表し、現代の「今年」「来年」の意味といて2文字連語としても刻まれている。


「年」造形は、禾と人を上下に組み合わせた造形であり、意味は祭祀「祈年祭(としごいのまつり)」のように年(みのり)を祈るという「みのり」の意味で刻まれている。古代日本の五穀豊穣を祝う祭祀は、奈良時代の養老律令(718年推定)の神祇令により、年単位の祈年祭、月ごとの月次(つきなみ)祭と呼ばれる。新穀には神嘗(かんなめ)祭、相嘗(あいなめ)祭、鎮魂(たましずめ)祭、大嘗(おおにえ)祭、延喜式(927年)祝詞は、自然の歩みと共に生きる祈りであった。大野晋「神」P47 参照

 卜辞には「受年」祭祀が多く、「年(みのり)を受けるか」「年(みのり)を受けざるか」のように吉凶を祈り、亀の甲羅にはsymmetryで肯定否定の文言が刻まれている。


古事記や日本書紀にある「ウカノミタマ(倉稲魂命)(宇迦之御魂神)」の「ウ」けは、お受けする意であり、伊勢神宮外宮の「豊受媛神」は、時に「大歳神(おおとしがみ)」とも語られる。甲骨に刻まれた「年」「受」「歳」の重要な神聖文字が、3400年前の文字の構造を継承するかのごとく、見事に古来の神道に関連し受け継がれているようだ。

 


補足:<Jupiter造形との奇妙な類似>

歳は「今歳」「來歳」と一年をあらわす以外にも、卜辞では祭祀名として刻まれており、単なる実用の武器ではなく、鉞とともに「歩(祭祀齊行)」して、滞りなくすすみ執り行われる象徴としての「歳」である。のちに金文にいたり、天体の運行さえをも、祭儀器と進行する歩で表現した。足跡をつけて進みゆくに、宇宙観も足下から、着実に天体を捉えようとするおもいを感じることができる。

 



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