未考1 植物とともに描く未来。
西暦2024年3月8日。辛未の日。「未来」は樹木でできている。植物を侮ってはいけない。人類は時の流れとともに生長を重ねる植物の恵みを受け たくさんの恩恵を授かった。現代漢字には、一部の艸かんむりの文字を除いて、艸かんむりのつく文字は、艸木にまつわる漢字である。
我が国には「草木国土悉皆成仏」という国土も成仏できるとする言葉があるが、実は1961年以降にできた言葉とも言われている。古くはインド大乗仏教を経て中国の三論宗や華厳宗の流れの中で「草木成仏」という植物が成仏する思想があったともされている。
艸木に関連する重要文字のひとつが「未来」である。
十二支のなかでは、この8番目の「未」と次の「申」のふたつだけが自然に纏わる文字造形である。
「午(絲)」からの流れを受けて祭祀の入り口に立ち、時間は次のステージへと進む。
巨大な御神木を目の前にしたことはあるだろうか。
注連縄で区切られた聖所にて榊をたてまつる。艸木に祈りを込めた作法を玉串奉奠という。
境界を越えたら、次に人知をはるかに凌ぐ自然の領域へと時は進んでゆくのである。
「未年(ひつじどし)」の「未」造形を考察する。
動物の「ひつじ」も重要な生き物であるが、時を著す十干十二支の暦として、甲骨文には、ひとつも記されていない →いきものは原初の発想とは関係ない。→ 十二支は過去ブログ参照。
すべての甲骨造形を分け、「自然」や「人工物」などなどに、分類整理をして、
文字生成の構造の全体像をみわたしてみると、統計的にもわかることがある、
艸木に纏わる文字は多く、文字構造の一端を担う重要なまとまりを創ることができる。
むらかみすぶん原姿力發想圖本は、小学生の漢字を中心に収録した圖版資料であるが、あいうえお順に並べて紹介はしていない。
加えて教育要領で定めた小学生で習う順番でもない。ヒト(人)造形(にんべんなどを含む漢字)からはじめる順にもしなかった。原初の発想は現代漢字の枠組みとは異なる発想で創られたからだ。
圖版を作るのは絶対にはずすことのできない「こだわり」は、草木に関連する造形から物語がはじめよう。ということであった。艸木→大自然→いきもの→そのあとに人の文字を並べる。人類の最初の發想は、共存するためのまわりの生命(艸木)を蔑むことはしなかった。この星には豊かな土壌があって、草花は常に生長し続け、我々人類にとってもっとも重要な存在であったことを古代人は知っていた。
人生という漢字の「生きる」の「生(せい)」造形は甲骨文字では艸木の芽生える形である。3400年間の艸木の發想から生み出されて、現代の漢字へ継承されその姿を宿している文字は多い。
地面から草木が芽生える表現を強調したのは「生きる」ということ。「生」造形である。この文字は祭祀動詞名としても重要で、「生を求む」という連語で、これから生まれてくる「生命の誕生」をいのり、祖先神に承諾を告す祝詞が記されている。
生きるの反対は「死」なのか。
その発想も甲骨造形の答えは違う。
地面から芽生える「生」に対し、
下方向へとしなだれた「不」
生気を失った文字が、「生」の上下反転造形の「不」となる。
Circleマンダラには、上下の対角線上に配した。
このように、あらゆるとことに意味や造形が対応する世界を描いた。
みなさんも、じっくり眺めて、3400年前の発想を、見つけて欲しい。
「生」の上部の艸だけでも重要祭祀名「艸」として、酒祭の記述が刻まれている。
そして本題の「未来」をみてみよう。
漢字造形に「未」も「來」も艸木を象った文字をベースにしている。
暦の「未」造形は、伸びゆく艸木を表している。
「來」は麦の象形であるが「往来」などの連語もすでに甲骨に刻まれていて
麦造形を「來る、來たる」などの意味として文字創成した。「麦」の甲骨文字も存在する。
シンプルな木の造形にもう一度立ち返る。
まだまだ深い意味を持った造形は発想されたいた。
深い根っこ。
その根っこを更に協調した文字
「求」「奏」
特筆すべきは、甲骨文字では、下部の「根っこ」がしっかりと表現されているということ。
以前、小学生のこどもたちに「木を書いてみよう」というテーマでお絵かきをする実験をした。
どのように書くのだろうか、と。結果はほとんどは根をかかないが、たまに根っこを書く子どももいる。
大人では調べていないが、根っこまで書く人はほぼいないであろう。世界は目の前に見えているものだけではない。ほかのいきもの、動物も昆虫も微生物も、草木たちにとっても太陽の光や地面の色や匂いはそれぞれ違っているのである。ただ最初の人類は「木」の造形に「根っこ」を書いて樹木の全体を刻んだ。
最期に最新作「神の種」資料にも掲載した「木+月」造形を。
「木」はそのすべてのベースとなる。
この文字「木月」は祭祀対象として、神として刻まれている。
つづく…
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