申考4 文字以前の記号Z。乙と壽。
乙 文字以前の記号造形。
甲骨文字よりも前には文字はあったのか。
現時点の考古学的資料としては匋文にみえる幾何学的なラインが、その謎を解く鍵となる。黄河の仰韶文化の匋文には甲骨文字に近い造形がみえる。また竜山文化の壺の文様には「申」へ通じる「乙」のような幾何学紋様である。
しかし断片にあるひとつの造形だけでは、連なる文章としては読みこむことができず、体系や文章構造もない。伝えるための文としては機能してないのである。定義では記号は文字とはいえない。
記号は文字であると断言はできないが、文字以前の考古学的資料の文様や造形もとても興味深い。
甲骨文字へ続く、その前後のつながりが、まったくなかったともはいえないだろう。
複雑さを生き抜く世界でシンプルな手掛かりは貴重なものだ。あまりにシンプルなラインだからこそ、その深遠な世界の魅力に引き込まれてしまう。考古学的資料が物語る幾何学文様は何を意味しているのか。葬祭器に描かれていたものの中に、乙(おつ)やZ(ゼット)のカタチがある。そしてそれらは雷や寿へ通じる造形ではないか。
原姿力發想02大自然Circleの何かには「申」のカミナリと共に、「電」「雷」
さらに「乙」造形との関連も考察すべき「壽」の文字を掲載した。
現代でも漢字「壽」は吉祥語として大切にされてきた文字だ。
「十二支の發想」ではより細かく「壽」造形に関連する文字資料を掲載した。
たくさんの資料をトレースするといくつか目をひく造形もある。「Z(ゼット)」のカタチをもった文字である。文は「…帝壽…」と、前後が破損してて内容を確実に理解することはできない。また初期でも後期でもなく、殷代の甲骨文字期間の中期あたりの甲骨文であろう。「帝」の文字も特殊な造形で刻まれている。
ジグザクのラインが斜めに通る。その間に口(さい)がちりばめられている。
帝が降す「コトブキ」と見れば、大いなる吉祥を戴くことだろうか。
その要素にある「乙」は、たった1画で表現されたこの造形で、きわめて簡略化されている。
干支(十干)用例以外にも祖先神呼称や、
甲門、乙門などの神聖なトビラの名称(※鳥居)としても刻まれる。
造形考察は諸説アリ、甲と乙を対と見立てて、亀甲のさけた甲、獣骨の象形(乙)とする説もある。
はじめに紹介した仰韶文化の陶文に類似記号しかり、
文字以前の造形は、わからないことがまだまだ多い。
以前、ハッとした。一瞬、鳥肌が立った。
現代ニュースのなかで印象的な「造形」に出くわすことがある。
<ロシア、ウクライナ侵攻:Zマークの戦車に乗った兵士達>
造形はシンボルとなる。
文字には言霊が宿るという。
以前、神(祭祀対象としての)造形を集めた資料「神の種」に関しては
政治利用、宗教利用、戦争利用、お断り!と書いた。
原姿のエネルギーは、いかようにも利用される危険がある。
人類が共存するために編み出した現実的な「いのり」が甲骨文字である。
はじまりは、虚飾や、妄言、なにかを排除し差別するために刻まれたのではない。
のち権力者に利用され、権威的な文字も増えた。
いっとき流行でできてしまった無駄な難漢字も多い。
権力者に悪用される前に、真実の造形に触れて、自分の目で確かめよう。
文字以前の世界は、いまだ未知なる造形が存在する。
謎解きは終わらない。
その發想のみなもとに触れたい。
時をこえて、想像力をかきたてるのだ。
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