酉考1 御神酒の奉製・奉奠。
酉造形は、空を飛ぶ鳥ではなく、酒樽の器の象形である。酒や液体状のものを入れるいれものの造形。我が国でいう御神酒である。
2024年3月10日 癸酉の日。酉の市は宴である、「酉」は神々の饗食する覚醒の時なのだから。
我が国でいう御神酒(おみき)は神事や祭礼で神様にお供えするお酒のことをいう。御神酒は神饌(しんせん:神様に献上する食事)のひとつとして供えられる。供えられた後の御神酒は修祓されて特別なお酒として、祭礼のあとに「お下がり」としてふるまわれる。御神酒は正式には白酒、黒酒、清酒、濁酒の4種類だが、近年は伊勢神宮などを除いて簡略化され、清酒のみがお供えされる。
もっとも原始的な酒として「口噛み酒」がある。加熱した米を口の中でよく噛み、唾液に含まれる酵素で糖化し、野生酵母によって発酵をすすめる「口噛み酒」。我が国の言い伝えのひとつには、巫女が口の中で醸すともいわれている。口噛みは御宮の巫女に限られた特別な神事とされた。もともと古く縄文時代には酒造が行われていたという説もある。奈良時代には國として造酒司(さけのつかさ)という役所があった。日本酒の米麹での醸造法は公務として重要な祭事のひとつであったとおもわれる。『播磨国風土記(はりまのくにふどき)(奈良時代初期)』には、「大神に供えていたお米にカビが生えたため、酒を造り捧げた」という主旨の記述があり、カビの生えたお米から発酵する酒造りの物語まで伝承されている。
酋…御神酒を奉製。酒造のための穀物(上部の米)を発酵させる様子を表現した造形。
世界を見れば、現存する最古の文学のひとつ「ギルガメシュ叙事詩(古代メソポタミア)」の中に「シカル」の記述がありる。その存在を知らいない人物を「野蛮人」として見下す描写もあり、秘匿の神事というよりは、排他的な優生思想ではあるが、東西の宗教の違いはあれど、特別なものとして扱っていた点は同じである。ビールのルーツのひとつとされる「シカル(またはシカリ)」は、今から約5,000年前の紀元前3000年ごろ古代メソポタミアにシュメール文明の時代に遡る。シュメール人が残した遺跡に残された粘土板にはくさび形文字での記録がある。「モニュマンブルー(醸造の記念碑)」によると、大麦を発芽させた麦芽を乾燥し、そこに古代種の小麦であるエンマーコムギを混ぜて「バッピル」と呼ばれる固いパンを焼き上げる。この「バッピル」を砕いて湯で溶き、野生の酵母を使って自然発酵させたものが「シカル」である。
大陸(中国)の紀元後の文献や、おおよそ流布されている中身は、ほとんどが後の創作であるが、その時の権力者の意向や、時代それぞれの思想が垣間見れる。
国家が「酒」によって動くことは、世界の歴史上さまざまな例がある。(※ここでは書かないが、)
本来は「神事」としての「御神酒」は、神々との饗食においての「直会(なおらい)」におけるものであるが、神々への畏怖を失えば、「人」による事件が起るのは当然であろう。その覚醒に対して、我が国は「見て見ぬふりをする」かのごとく「大麻」についても曖昧な態度で、向き合っていない。神宮大麻があり、わたしは神職の頃、大麻頒布の作務もしていた。説明をせずに命令だけをすることは問題である。
タバコは良くない!
酒は良くない!
大麻はよくない!?
臭い物に蓋をしろ~っ
それだけのアナウンスでは、民は幼稚園児の扱いである。健康に良くないとして、科学的根拠を示すデータも怪しい。結局権力者の都合を与(くみ)し、國から国民税金という名の報酬をもらう研究者・学者が生き残る。
祭祀や儀礼を言語化するのは、難航する作業ではあるが、国家神道の反省も含め、向き合って取り組まなければならない重要な事柄であろう。根本には現代教育の「文字」の学び直しと、民族宗教として「神道」を客観的な視点で整理することからかもしれない。過去のマニュアルと、腐敗したシステムは一掃されるべきであろう。
地鎮祭においても、その地を清めるための修祓にも「御神酒」がある。土地の中央の地面に埋める「鎮めもの」は、その大地への畏怖の念とともに、奉奠される。現代の地鎮祭へ通じる3400年前の造形が甲骨文字の「奠」である。
奠…奠【酉+指示記号(下部横線で地面部分を強調)】酒樽を地面に安置した造形。定める。財貨を安置する。人を留め置く。また支邑の地域名や、貞人の名前や亞奠(墓守り人)としても刻まれている。
酒の文字はさんずいで液体を意味するが、甲骨文字造形はすこし注意が必要である。
さんずいは水の造形であり、水+酉が現在の漢字の「酒」にあたる。
甲骨文字「酉+彡」造形の彡(さん)は、酒滴(水)ではなくその輝きや、その香りの表現。デザインとして極限まで洗練されたかたちは、その意味を雄弁に語る。小点や、シンプルなラインで、光、音、血液、汗、泪など、それぞれの意味を文字ごとに表現してる。甲骨文字を読み解くには、このような細部にまで、その造形の本質を見極める必要がある。酒を注ぎ、浄化や祈りの覚醒を伴う美しい祭祀を表現した。三本の線は、彡(さん)となり、この場合は特別な祭祀名の表現造形である。
「酉」造形を要素にもつ文字は多い。
十二支の10番目「御神酒」は、十二支Circleでは「直会(なおらい)」を表現している。続く…
Comments